審査委員のインタビューや過去の助成決定団体のコメントなどさまざまな内容の動画や記事をアップしていきます。
第3回 日本財団
みらいの福祉施設建築プロジェクト
日本ではこれまで時代のニーズにあわせた多くの福祉施設が設置されてきました。日本財団においても、こうした社会のニーズに対応するべく、40年以上にわたり、時代の要請に応じた数多くの福祉施設の建築助成を行ってきました。
近年、少子高齢化や多様性の尊重、コミュニティの希薄化といった社会背景の変化に伴い、福祉施設は、多機能化や地域貢献への動きが活発となり、地域福祉を担う拠点としての役割が求められています。少しずつではありますが、地域の中に設置し利用者と地域の交流を促したり、利用者や働くスタッフのことを考えたりするデザインの施設も増えてきました。
本プロジェクトは、つながりの希薄化などの地域社会の構造の変化を見据え、福祉施設が、地域課題を解決するなどの地域づくり・まちづくりの核となる「福祉施設3.0」となることを目指します。そのためには、サービスを充実させニーズに応えていくことに加え、場所としての魅力や居心地の良さに繋がる建築デザインの力が重要です。福祉施設に、建築デザインの力が合わさることで、地域にひらかれた魅力ある場所となり、地域社会に貢献し、地域社会から愛され、地域福祉の拠点となってほしいと考えます。
福祉施設が、施設を利用する方や家族、そこで働くスタッフ、地域の方々にとって誇りとなり、地域にひらかれた、だれにとっても身近で重要な場所であるという考えを広く周知し、これからの福祉のあり方を考えるきっかけにもなることも期待しています。
●上限金額
事業規模に見合う適正な金額を助成
●最大補助率
事業費総額の80%
●助成件数(目安)
10事業程度
●対象となる団体
日本国内にて次の法人格を取得している団体:一般財団法人、一般社団法人、公益財団法人、公益社団法人、社会福祉法人、NPO法人(特定非営利活動法人)、医療法人
※一般財団法人および一般社団法人については非営利型のみ対象とします。
※医療法人については、経過措置型医療法人でないことを条件とします。
※設計者参加資格は「第3回 日本財団みらいの福祉施設建築プロジェクト募集要項 <設計者向け>」「設計者参加資格」に記載のとおりです。
●対象となる事業
福祉事業(※)を行う施設や事業所の建築関連事業(新築/改修・増築等/外構工事)
※福祉事業とは、社会福祉法に定める第一種社会福祉事業および第二種社会福祉事業を指します。
●申請締切
2023年9月15日(金)17:00
※申請は2023年8月1日(火)より可能となります
●1次~2次審査
日本財団および審査委員による書類審査(募集締切後~2023年11月下旬)
●最終審査
事業実施団体と設計者によるプレゼンテーション(2023年12月17日・18日)
●事業実施団体と設計者が協働すること
●本プロジェクトの趣旨に沿ったものであること
●募集要項の記載内容を遵守すること
●本サイトで募集要項をダウンロードし、詳細を確認のうえ、申請してください
●事業実施団体による各種書類の提出と、設計者による設計デザイン案の提出が必要です
本プロジェクトの最新情報をメールでご案内しています。ご希望の方はこちらでご登録ください。
※一部のメールアドレスが、システムの問題等でエラーになっています。メールが届いていないと思われる方は、再度ご登録いただくか、下記へご連絡ください。
fukushi-kenchiku@ps.nippon-foundation.or.jp
建築家
早稲田大学 教授
NASCA 代表
建築家
早稲田大学 教授
NASCA 代表
1955年 東京生まれ
1978年 早稲田大学理工学部建築学科卒業
1980年 早稲田大学大学院博士前期課程修了(穂積研究室)
1986年10月〜1987年10月 文化庁芸術家在外研修員として、スイスの建築家マリオ・ボッタ事務所に在籍
1990年4月〜1994年3月 近畿大学工学部助教授
1994年4月〜1997年3月 早稲田大学理工学部助教授
1994年9月〜 NASCA設立
1997年4月〜 早稲田大学理工学部教授 (現・創造理工学部教授)
2017年〜2019年 日本建築学会 会長
2020年〜 早稲田大学芸術学校 校長
2021年〜 東京建築士会 会長
認定NPO法人ホームホスピス宮崎 理事長
一般社団法人全国ホームホスピス協会 理事長
認定NPO法人ホームホスピス宮崎 理事長
一般社団法人全国ホームホスピス協会 理事長
1998年 老いても、がんになっても、障がいをもっても、家にいたいと思ったら帰れる地域づくり「ホームホスピス宮崎」の設立に参画。2002年より理事長。
2004年 空いている民家を活用してもう一つのわが家「かあさんの家」開設。住まいを中心に、医療、介護、生活支援が一体となったケアの体制をつくる。
2015年 一般社団法人全国ホームホスピス協会を設立。理事長に就任。
2021年 在宅総合支援「HALEたちばな」開設。医療的ケア児とその家族を支える短期入所や日中一時支援、カフェ、研修室など複合的な施設。「みつばち診療所」(小児科・内科・在宅医療)開設。0歳から100歳まで安心して暮らせるまちづくりを目指して活動を続けている。
賞罰:2015年「保健文化賞」(第一生命・厚労省)「毎日社会福祉顕彰」(毎日新聞社)
2018年「エクセレントNPO大賞」(言論NPO)
著書:「ホームホスピスかあさんの家のつくり方」「暮らしの中で逝く」「地域包括ケアシステム」共著他
建築家
SALHAUS
建築家
SALHAUS
1974年 埼玉県生まれ
1997年 東京理科大学理工学部建築学科卒業
1999年 同大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了
1999年〜2006年 山本理顕設計工場
2008年 SALHAUS設立、共同主宰
現在、株式会社SALHAUS 代表取締役
芝浦工業大学、東京電機大学 非常勤講師
法政大学 兼任講師
社会福祉法人越前自立支援協会 児童家庭支援センター・子育て支援センター・里親支援機関・児童養護施設 一陽 統括所長
社会福祉法人越前自立支援協会 児童家庭支援センター・子育て支援センター・里親支援機関・児童養護施設 一陽 統括所長
1990年 中央大学法学部法律学科卒業と同時に越前(旧武生)市役所に入庁、2009年の退職までの期間、主に福祉行政を担当。
2006年 仲間とともに社会福祉法人越前自立支援協会を立ち上げ、2011年 児童養護施設を創設。
その後 2013年 児童家庭支援センターを、2015年 子育て支援センターを開設し、現在、社会的養育にかかる多様な地域子ども家庭支援を展開中。
編著に『地域子ども家庭支援の新たなかたち』(生活書院、2020)、『社会的養育ソーシャルワークの道標』(日本評論社、2021)
建築家
横浜国立大学大学院Y-GSA 准教授
フジワラテッペイアーキテクツラボ 主宰
建築家
横浜国立大学大学院Y-GSA 准教授
フジワラテッペイアーキテクツラボ 主宰
1975年 横浜生まれ
1998年 横浜国立大学 卒業
2001年 横浜国立大学大学院修士課程 修了
2001~2012年 隈研吾建築都市設計事務所 勤務
2010年~ 一般社団法人ドリフターズインターナショナル 理事
2012年~ 横浜国立大学大学院Y-GSA 准教授
2012年~ 株式会社フジワラテッペイアーキテクツラボ 主宰
2013年~ 宇部ビエンナーレ運営委員、展示委員
社会福祉法人ぷろぼの 理事長
社会福祉法人ぷろぼの 理事長
愛媛県出身、奈良市在住
青山学院大学卒業後にメーカー系企業に就職、30代後半から東京でIT企業を設立し、主にロボットの目や地形計測等に応用する3次元画像解析システムを開発する。20年程前に、病気で喉頭を失い発声障害者になる。2年間の静養後に奈良で市民ボランティア活動に参加し「人」や「地域」の大切さを知る。
その後、社会福祉法人ぷろぼの を設立し、「福祉を科学する」をテーマに、障害者の就労による経済的な自立に取り組む。
平成28年に“快適なはたらく環境づくり”をテーマに、奈良に吉野の木材による、日本初のCLT工法による木造5階建ての福祉ビルを建設する。
現在は人工喉頭器で発話、専門は福祉情報分野。
モットーは“下学して上達する”
日本財団 常務理事
日本財団 常務理事
1991年、日本財団に採用。競艇学校での研修、旧運輸省への出向を経て、阪神淡路大震災復興支援の団体設立、公益事業の成果物を電子化し公開する情報公開サイトの構築、事業及び管理系業務の改革とIT化、財団のブランディング構築などを担当した。
事業面では、犯罪被害者支援制度の定着と促進、高齢者の転倒予防に関する事業の開発、船舶の技術開発や造船事業者の安全対策推進、企業との連携プロジェクトなどを担当し、経営支援グループ長、総務部長を経て2017年に常務理事に就任。現職。
組織や活動についての情報公開を適切に行っているか、または外部機関による組織評価を受けているか。
地域の特性やニーズに沿った“みらいの福祉”を目指しているか。
事業の目標が目的に沿って明確に設定されているか。
目標を実現するための事業計画・資金計画が適正かつ合理的であるか。
多様な関係者を巻き込み、事業の社会的意義を高めるとともに効果的に実施する工夫があるか。
助成終了後においても活動を継続、発展させていくための十分な自己財源や資金調達の計画があるか。
施設を利用する人や地域住民が心地よく過ごせ、誇りを持てるような空間であるか。
地域にひらかれた、“みらいの福祉”を実現するための建築であるか。
助成終了後においても活動を継続、発展させていくための建築になっているか。
1次審査通過事業(50事業)を決定いたしましたので、下記の通り報告します。
※申請件数:116事業(重複申請を除く)
※記載事項:設計デザイン案登録番号、事業ID
1次審査通過事業(PDF)
2次審査結果について、下記の通り報告します。
なお、2次審査不採択事業については、以下PDFをご覧ください。
2次審査不採択事業(PDF)
【2次審査通過事業(8事業)】
※記載事項
設計デザイン案登録番号
設計デザイン案タイトル
事業実施団体/設計者
NFP0007
里山を再生し、地域とともに生きる 「木の駅」と「森のこもれび館」から始まる、暮らしの中のエネルギー革命
(福)悠和会/カスヤアーキテクツオフィス一級建築士事務所
NFP0022
だんのはるオーガニックケアガーデン
(特)おおいた子ども支援ネット/有限会社アトリエ・ワン
NFP0025
スウィートポテト・リトリート
(福)福祉楽団/有限会社アトリエ・ワン
NFP0045
にちこれ
(医)医王寺会/株式会社パトラック
NFP0064
石神井いとなみの起点
(福)東京都手をつなぐ育成会/ケアスタディ・スタジオ・クハラ・ヤギ設計共同体
NFP0097
多機能型重症児者等通所施設「すまいる畑」
(福)道/b.i.n木村敏建築設計事務所
NFP0111
みんなのまち-地域と福祉の日常的な関わりをつくるプラットフォーム-
(福)優樹福祉会/有限会社辺見設計
NFP0126
あまやの舎
(特)CCV/建築設計室わたなべ
(以上、設計デザイン案登録番号順)
NFP0022
だんのはるオーガニックケアガーデン
特定非営利活動法人 おおいた子ども支援ネット
有限会社アトリエ・ワン
高低差のある敷地全体を緑あふれる丘にして、その中に放課後等デイサービス、みんなの家、居住支援事業施設などを有機的に分散配置する計画。既設の舗装をはがして積極的に緑化し、果樹などに囲まれたオーガニックな環境を生み出そうとしている。敷地に生まれる多様な場所のすべてが遊びの場所、学びの場所となる構想はユニークである。
高低差のある敷地を繋ぎながら、豊かなランドスケープにより障がいをもつ子どもたちと大学生、地域との交流を促そうとする提案で、大変魅力的な計画です。放課後等デイサービスの室内活動スペースが豊かな屋外空間と直接つながるような工夫ができると、計画全体がさらに良いものになるのではないかと思います。
発達障害等を有する子どもたちへの支援を、地元のお年寄りや大学生も巻き込み、地域ぐるみで展開していきたいというプロジェクト提案は、極めて明快であり、十分にリアリティを感じさせるものでした。おおいた子ども支援ネットの溢れんばかりのエネルギーが、孤立しがちな子どもやその家族を笑顔にしていくに違いないと確信しています。社会的養育の先進県である大分での「育ち合う場づくり」に大いに期待します。
これまでの業務実績とともに地域の方々との関わりの延長に、関係者の期待と課題に対応し計画されていると感じました。
子どもたちのワクワク感に地域の方々が集まる場所になるだけでなく、竣工後に更に子どもと建物、そして運営のノウハウを育てていく場所になることを願っています。
NFP0025
スウィートポテト・リトリート
社会福祉法人 福祉楽団
有限会社アトリエ・ワン
若年刑余者や障害者を含む多様な利用者がサツマイモ栽培に携わるポテト・ステーションと、農のある暮らしを楽しむビジターのための菜園付きコテージからなり、農だけでなく周辺の森林管理の一翼も担うという農業・林業・福祉の連携モデルの構想。これらによりコミュニティー経済に寄与し、地域の人材育成にも資する点が評価された。
福祉事業の制度の狭間でケアが行き届いていない課題に対して、土地に根差した農業の六次化施設と混ぜ合わせることで、地域社会で支えあいの連関をつくろうとするプロジェクトである。大変重要なチャレンジであり、小さな集落のような空間性が、どのように連関に寄与するのかさらなる展開を期待したいと思っている。
若年刑余者の多くがIQ89以下になるとの報告から、この若者たちに新たな活躍の場を提供したい、その意気込みを実践するために、独自に彼らが住むグループフォームを建設して、ポテトの栽培と加工、販売の仕組みを構築して、働くことで得られる喜びと可能性を想像できる取り組みは評価できます。
これから期待することは、障害福祉サービス事業と生活困難者自立制度の巧みな活用法の実践例づくりと彼らの生育歴や障害特性等の要素から、科学的にアセスメントできる手法の開発になりますので、チャットボットの導入などご検討ください。
これまでの実績に基づいた事業内容であることと、今後の事業展開に向けた研究が進められていることが何より評価できる点でした。
社会課題に対応した事業モデルとなる期待がありますが、課題解決や社会の変革に結びつける事業性があれば、更に長期的に期待が持てる事業になると考えます。
NFP0045
にちこれ
医療法人 医王寺会
株式会社パトラック
地域の施設療養支援として、高齢者のみならず、医療的なケアを必要とする子どもや成人の生活の場としての、介護棟、診療棟、カフェ棟からなる複合施設の構想。自分の居場所だと感じられる個室や小さな共用部、利用者同士が日常的に交流するリビング、さらに地域住民や社会とのつながりを感じられるカフェまでの多彩な居場所が魅力的である。
ロードサイドの廃業したパチンコ屋を、医療と福祉の拠点に転用する。街のみらいがまさに希望のある方向に耕されていくのを実感する。大変すばらしいプロジェクトだが、規模が大きい建築なので、どうしても「施設感」が出る。デザインは引き続き注意を払う必要がある。まずは外部空間が重要で、地域交通をうまく巻き込んで、だれもがふらっと立ち寄ってしまう、<まちかど>的な敷居の低い場として案をさらに練り上げてほしい。
第2回目の提案をさらに改善し応募されたことを嬉しく思いました。医療を地域住民と共に作り上げていく過程は、長くて遠い道かもしれませんが、素晴らしい道です。既存の建物も利用しながら、「にちこれ」が松坂の街で安心して最期まで暮らせるまちづくりの拠点となることを期待しています。
高齢者にとって最期まで居場所や役割を持ち続けることができる、そのような支援を受けることができる在宅医療・介護事業を行う機関は、これから大切になります。その思いを持って地区社協や関係機関と連携して、継続的な取り組みを実践していることはとても評価できます。
これから期待することは、今後、多様な世代や思いを持つ方が参加されますので、設立当初の趣旨を大切にし、すべての参加者が何かしら役割を持ち日々関われるために、定期的な生活及び医療・福祉情報を共有できる仕組みづくりが必要になります。新たな体制と運用システムの整備をご提案します。
NFP0097
多機能型重症児者等通所施設「すまいる畑」
社会福祉法人 道
b.i.n木村敏建築設計事務所
医療的ケアが必要な子供たちを看護師たちや親たちが連帯しながら支えていく。福祉によって新しい、拡大家族をつくろうとするプロジェクトに感じた。温かい空間性があり、謙虚さがにじみ出ているスッとした建築の佇まいも好印象である。あとは、このプロジェクトが持つみらいの地域社会に向けた意思を、地域の場としてどのように表すのか、そのあたりをさらに考えてもらえたらと思う。
コンパクトで温かみのある空間を、建築側は大胆に開きながら、植栽などのランドスケープで緩やかに閉じるという計画で、とてもバランスが良く、高く評価しました。中央の訓練・作業室の屋根架構が魅力的ですので、照明計画や設備計画の工夫により、この魅力が損なわれないように丁寧に設計を進めていただければと思います。
医療的ケア児を含む重度の障害を持った子どもさん達が、安心して集える居心地の良い場所になります。やもすればクローズしてしまいがちですが、建物もあえて開放的になっているところが素敵です。特に訪問看護ステーションが主軸となって福祉型短期入所を実践されることは、まだ制度が追いついておらず運営上からすれば採算が取れる事業ではありません。しかし、子どもさん達や親・兄弟たちにとって、何が最善なのかと問い続けてケアを実践していただければと期待しています。
約十年前に友人仲間の看護師数名で創設したという法人の生い立ちをお聞きし、とても和やかな気持ちになりました。また医療的ケア児者や重症心身障害児者をケアし育む拠点をつくりたいという本プロジェクトのコンテンツの一つ一つにも、得も言われぬ温かみを感じました。全国の多機能型重症児者等通所施設のモデルとなるような施設運営を期待しています。
NFP0111
みんなのまち-地域と福祉の日常的な関わりをつくるプラットフォーム-
社会福祉法人 優樹福祉会
有限会社辺見設計
越境する福祉的な存在によってまちがときほぐされていき、多文化・多世代の交流の場ができる。そのような将来のイメージを持った。人やイベントの力引き出し、日常的なときほぐしをどうやってつくるのかが肝になると思う。ピロティや接地階、多機能に機能する室などを上手く活用し、さらにデザインを仕上げていってほしい。
広場や畑と呼応するように配置されたカフェや工房、里道に面した雁木通路など、外との関係を生み出そうとしている点を高く評価しました。一方で、その魅力的な外部空間が隣地側に向いていること、雁木通路に対して室内空間が閉じていることなど、現段階ではいくつかの課題もあります。平面計画は見直す余地があると思いますので、この計画の魅力が最大限に活かされることを期待しています。
みちのくの玄関口としての歴史を有する白河の地において、未来の福祉建築(プラットフォーム)を創出することで、地域と福祉の日常的なかかわりを醸成していこうというコンセプトに共感しました。隣接する南湖公園を上手く活用しながら、そう遠くない将来に「つながり、ひろがる、みんなのまち」が誕生することを願っています。
地域に大切な場として障害者支援施設がその役割を担うために、不定期な交流ではなく日常的にごく自然に交流ができる仕組みを作り出すために、「食のプラットフォーム」を構想する。そこで食の多彩なメニューから、各自が役割を持ち、地域の人たちと新たなコミュニティを作り出す挑戦は評価できます。
これから期待することは、食のプラットフォーム構想の事業内容と規模の細かなスケジュール作成になりますので、直接専門家が参加する仕組みや新たな社会文化を形成する意気込みが必要になります。全国の知的障害者施設のモデルになる福祉システムになることを期待しています。
なお、最終審査不採択事業については、以下PDFをご覧ください。
最終審査不採択事業(PDF)
初めて審査に臨んだが、総じて情熱と創意に溢れた提案が多く、大変感銘を受けた。特に前年に不採択とされた事業の中で、格段にブラッシュアップされて内容が充実したものが多いと聞くと、この審査会そのものも、未来の福祉施設を生み出していく上で、提案者とのキャッチボールのパートナーとして有意義に機能していることがよく理解できた。
最終審査を通過した5事業は、いずれも内容のよく練り上げられた提案となっており、それぞれの立地のポテンシャルを最大限に活かした実効性の高いものとの印象を持った。今後提案が具体化し、初期の成果を挙げられるよう心より願っている。
昨年に引き続き2回目の審査を担当した。「みらいの福祉」の在り方を「具体的な建築」の計画を通じて示すには、事業者の側も建築家の側も大変な労力が必要になる。
福祉から地域を構想するためには、ある種の公共性・利他の考えが欠かせない。一方で、みらいに向けて自分たちを転じていくためには、強いリーダーシップが必要だ。それらを調停し、建築の計画として着地させていくには建築家の側には、みらいの福祉とは何かを問う探求の精神とそれを計画に落とし込む実際的な設計力の両方が求められる。嬉しかったのは、昨年惜しくも不採択になった事業者が引き続きチャレンジし、その内容がハード・ソフトともに磨かれて採択に至ったことだ。みらいとはこのように葛藤し、苦闘して耕されていくものだと感じた。
昨年に引き続き審査を担当しましたが、今年は春にフォーラムを開催したこと、過去に応募経験のある事業者が多かったことなどにより、応募総数こそ減少しましたが、全体的にレベルは高かったと思います。このプロジェクトが目指す「みらいの福祉建築」への理解が進んだ結果だとしたら、大変喜ばしいことです。建築については、特に再応募案の計画練度が高く、昨年の審査で惜しくも不採択とした事業をいくつか採択できたことは審査員として大変嬉しく思っています。
このプロジェクトへの応募を契機に、事業者と設計者との議論がより深まり、みらいの福祉建築が一つでも多く実現することを願っています。
このプロジェクトは、建築デザインが福祉施設でのケアの質を高める重要な役割を持っているという視点で未来図を描くというワクワクするものです。その為には建築家と協働し、地域住民を巻き込みながら一つの提案を作っていくプロセスが重要でした。応募の条件に上限金額が無くなり80%助成となりましたが、第3回の応募には、第1回、第2回に不採択になった団体も再度申請をされ、より計画がブラッシュアップされていました。時代と共に変化していくケアのニーズを察知しそれに応じて形や仕組みを作っていくことは、理念だけでなく、組織力、実践力、継続性、それに加えて発展性がなければならず、その観点でも審査いたしました。完成した建物が地域全体に影響を及ぼし、福祉施設が変わっていく、それを想像するだけで、審査委員として刺激的で楽しい時間でした。応募団体のまちづくりに対する情熱を見させていただいたことに感謝です。
自己負担を一切求めなかった昨年度の申請には、‶当たればラッキー″的な付け焼刃の提案が散見されました。しかし一定の自己負担を求めた今年度の申請の多くは、斬新性はもとよりのこと、物語性も豊かで、その事業構想にも具体性があり、高い実現可能性を感じました。
ところで率直に言って、多くの施設では、自分の施設は開かれていると思っていても、地域住民からすると、まだまだ閉鎖的、入りにくいと思われている実態があります。それゆえ、そこをどうクリアしていくか・・・「なるほど、これだと地域住民を巻き込めるな!」、「この空間ならば、自然と地域の人たちが集まってくるな!」と思わせるような説得力のある提案が最終的に推されました。
本事業も3回目になり、委員も本事業の趣旨、目的及び成果を把握できるようになりました。申請方式についても、様式の改善や事業計画を付加することで、建築家だけでなく関係機関及び地域の方たちから意見をいただかなければ、実現しない内容に仕上がってきました。今後に期待することは、福祉施設は障害者支援に徹することを大切にして、福祉を属人性の高い産業に止め置くのではなく、ICTや生成AIなどの新たな技術を導入して、現場の支援の記録、分析及び支援プログラムや生産活動の開発へ応用するなど、未来型の福祉構想をご提案されることを願っています。
また採択された事業はすべて福祉モデルなので、構想や成果等を公表されることを期待しています。
みらいの建築事業は3回目の募集となり、周知や仕組みの改善を重ねた結果、ようやくこの事業が目指している方向と申請事業の内容が一致するようになってきたと実感しています。そのため、申請件数は減少しましたが、審査が難しいものが多くなっています。
その分、法人の運営面において、これまでの事業や哲学を根本的に変革するものより、これまでの改善や工夫の延長線上に新しい企画があることが実効性を高く評価できると感じています。一方で、デザイン面では、心地よさや優しさだけでなく個性を更に発揮しても良いと感じました。今後の更に審査に悩む申請があることを期待しています。
本公募が申請事業に求めたい“みらいの福祉”の例を記載します。これらすべて当てはまっている必要があるというものではありません。支援対象とする人や地域により、必要とされるニーズや目指す姿はそれぞれです。どのような姿を目指していくのか、事業実施団体と建築設計者、その他関係者が一体となって議論を深め、計画をするための参考としてください。
●<全体>時代と共に変化するケアのニーズやあり方に応えるため、制度に関わらず、地域や利用者のために大切にしているケアの理念や計画がある。
●<利用者(高齢・障害等)>支援する側・される側ではなく、人と人との関係であるという考えのもと、各スタッフが、利用者のその日の状態を見て個別に必要なケアを判断し行う。
●<利用者(高齢・障害等)>利用者の意思を尊重し、毎日いきがいをもって過ごしてもらうために、本人の身体能力や認知能力にかかわらず利用者の希望を叶えるためケアの方法を工夫する。
●<利用者(障害(就労)等)>利用者の能力を決めつけることなく、施設内で支援される側から、地域社会の一員として活躍できるように、本人のステップアップを可能にする仕組みがある。
●<利用者(児童)>子ども期はその後の人生の土台となる重要な時間であるという認識のもと、本人の成長段階に併せた適切なケアを行いながら自身の成長を促す環境を整える。
●<利用者(児童)>どのような環境にある子どもも将来に多くの選択肢を持てるという考えのもと、子どもと養育者が孤立したり不安を抱えたりすることなく安心できる居場所になる。
●<スタッフ>施設で働くスタッフが誇りやいきがいをもって働くため、時代にあわせた組織運営(研修や情報共有、権限の移譲等)の仕組みを構築する。
●<全体(地域)>施設は地域を構成する一員であるという考えのもと、施設が地域ケアや地域の課題解決の機能を有する。
●<全体(地域)>利用者だけでなく、地域のために施設があるという認識のもと、施設に集う住民と利用者のつながりを生む仕掛けをつくる。
●<全体(地域)>地域住民が自然と施設に集まる仕掛けがあり、地域住民が施設を身近に感じたり、誇りに思うことができる。
本プロジェクトに関する「よくある質問」とその回答をこちらのページでまとめて掲載しています。お早めにご確認ください。