社会福祉法人大分県福祉会・矢橋徹建築設計事務所|第2回 日本財団 みらいの福祉施設建築プロジェクト
「第2回 日本財団 みらいの福祉施設建築プロジェクト」において助成が決定した団体に対し、採択直後にインタビューを実施しました。
■作品名:「制度のはざまにいる子どものケアとご近所さんの顔がみえる拠点づくり『えんえん』」
■実施事業団体:社会福祉法人大分県福祉会
■設計事務所:矢橋徹建築設計事務所
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孤独感をもつ人が集まる「第三の家庭」をつくりたい
事業について考えはじめたのは6年ほど前です。保育指針の改正を受け、地域への貢献や交流、開かれた保育園について考えました。当保育所としては入所定員がどんどん増えている中で、地域との協働が大切だと感じました。
子育てひろばを開催するようになってからは、その思いがさらに強くなりました。保育事業とは別に、子育て中の家庭や地域のお年寄り、小中学生まで、みんなが集えるカフェのような空間があったらいいなという思いから事業がスタートしました。
現代は孤独を感じている人が多いと思います。私たちは保育園について「第二の家庭」でありたいと考えていますが、当施設は孤独感をもつみんなが気軽にやってくる「第三の家庭」になれたらと思っています。
デザイナーさんから、適任な設計士さんを紹介された
「みらいの福祉施設建築プロジェクト」については、法人のブランディングに関わってくれているデザイナーさんから教えていただき、挑戦することになりました。そのデザイナーさんは福祉施設のケアプログラムやワークショップも企画されているのですが、その方と話す中で「私たちの思いが伝わりそうな設計士さんは矢橋さんしかいないよ」とご紹介いただきました。
私たちは保育が専門ですが、「人の集える場にしたい」と、さまざまな考えや理想を矢橋さんに伝えたところ、否定せずに受け止めていただけました。お互いに想いを伝え合いながらプロジェクトを進めることができました。
矢橋さんには、プロジェクトの定例会議のたびに、月に1-2回熊本から大分に来ていただきました。また、忙しい時もLINEワークス等を使いオンラインで連絡を取り合ってきたので、やりとりする上であまり苦労は感じませんでした。
(事業者インタビュー:社会福祉法人大分県福祉会)
ケアの対象を固定的なイメージで捉えない
福祉施設を設計する魅力は、建築を通して社会課題に取り組めることだと考えています。設計するうえでは、ケアの対象を固定したイメージで捉えないよう意識することが重要かと思います。例えば、高齢者や障害者といった枠組みではなく、地域性や世代などのさまざまな視点で考えることで、「形骸化した施設」ではない答えが現れるのではないでしょうか。
今回は、建築と未来の福祉の姿を一緒に考えることが不可欠なので、事業者と細かく共有しながらプロジェクトを進めることを意識しました。設計案をいきなり提示するのではなく、検討中の状態から段階的に共有して設計を積み上げる、「プロセスを開く」形ですね。
そうすることで、一緒に考えているという意識を事業者のみなさんにも持っていただくことができたかと思います。
事業者と建築家で、地域の問題や課題を抽出するところから協働する
プロジェクトを進める際には、まず「開く」という言葉をいろんな意味で捉えるために、福祉施設に限らず、家具やまちづくりなどさまざまな事例の研究をみんなで行いました。
また、現在から未来にどのように地域福祉をつなげるかを考えるために、地域の歴史や変遷を俯瞰し、積極的に地域の声に耳を傾ける機会をつくっていただいて、未来の福祉施設のあり方を模索しました。
事業者から希望を伝える場合は、具体的な要望を唐突に伝えるのではなく、地域にある切実な問題や課題を抽出するところから、建築家と一緒に行えるといいのではないでしょうか。そこから協働することで、建築家の創造性を最大限引き出せるのではないかと思います。
(設計者インタビュー:矢橋徹建築設計事務所)
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