山内民興氏(第3回 審査委員)|「新しい技術を取り入れてコミュニケーションを円滑に」
「第3回 日本財団 みらいの福祉施設建築プロジェクト」において審査委員を務めていただく山内民興さんから、公募にチャレンジされるみなさまに向けてコメントを寄せていただきました。
山内民興(Tamioki Yamauchi)
社会福祉法人ぷろぼの 理事長
愛媛県出身、奈良市在住
青山学院大学卒業後にメーカー系企業に就職、30代後半から東京でIT企業を設立し、主にロボットの目や地形計測等に応用する3次元画像解析システムを開発する。20年程前に、病気で喉頭を失い発声障害者になる。2年間の静養後に奈良で市民ボランティア活動に参加し「人」や「地域」の大切さを知る。
その後、社会福祉法人ぷろぼの を設立し、「福祉を科学する」をテーマに、障害者の就労による経済的な自立に取り組む。
平成28年に“快適なはたらく環境づくり”をテーマに、奈良に吉野の木材による、日本初のCLT工法による木造5階建ての福祉ビルを建設する。
現在は人工喉頭器で発話、専門は福祉情報分野。
モットーは“下学して上達する”
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今までの延長戦上に、新しい要素をどう付け加えるか
(2022年に審査に参加した)全体的な印象としては、みなさんオーソドックスかつスタンダードな“福祉”を提案されているように感じました。「みらいの福祉」ないしは「みらいの福祉施設」について、今までの延長線の上に新しい要素をどのように付け加えるか。人間の一日の営みをいかに支援していくかが福祉ですから、提案に突拍子もないアイデアが必要なわけではありませんが、もう少し、テクニカルな部分で面白さがあってもいいなと感じています。
「みらいの福祉」なのか、それとも「みらいの福祉施設」を考えるのかによって、申請の内容も異なってくるでしょう。そうした中で、やはり福祉施設——建物を、地域との関係性を築きながら作り上げていくかという課題が基本にあると考えます。
新しい技術を使ったコミュニケーション手法が必要
本プロジェクトの主たるテーマは「みらいの福祉施設建築」ですので、地域で営まれる人々の素朴な暮らし、もしくはその場所で働くことなどを通してどのように関係性を築いていくのか、その施設の建物そのものが地域のシンボル、ランドマークとして人々の目にどう映るかが、とても大事なポイントになると思います。
人間という生き物が、社会の中で他の多くの人たちと一緒に集団で生きていくとき、必要となるのは「お互い様」という考え方です。福祉建築で、それをどのように表現していくのか。また「みらいの福祉施設」として、人が持っている知識の伝達手法——コミュニケーションを、新しい通信技術やテクニックを使いながら円滑にしていく、そういう提案があってもいいのではないでしょうか。
議論を重ねて、人と人とのつながりを大切にする工夫を
福祉事業者のみなさんが、建築の専門家の方とそれぞれ打ち合わせを重ねながら十分に議論して、「こういう拠点が、私たちが考える“みらいの福祉施設建築”です」という提案をされるわけですから、人に対する想いや、コミュニケーションの手法はさまざまな形があってよいと思っています。
日本における「みらいの福祉施設建築」として、人と人とのつながりを大事にしていくためのコミュニケーションをどのような形でつくり上げていくのか、ぜひ工夫を重ねてください。
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