日本財団 みらいの福祉施設建築プロジェクト

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一般社団法人Burano・NIDO一級建築士事務所|第1回 日本財団 みらいの福祉施設建築プロジェクト

「第1回 日本財団 みらいの福祉施設建築プロジェクト」において助成が決定した団体に対し、採択直後にインタビューを実施しました。

■作品名:「BURANO OYAMA ―医療的ケアが必要な子どもたちと家族の欲張り拠点―」
■実施事業団体:一般社団法人 Burano
■設計事務所:NIDO一級建築士事務所

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子どもたちを預かる場所をつくりながら、行政の壁を薄くしていく

本事業について考えはじめたのは1年近く前のことでした。2018年からBurano(医療的ケアが必要な子どもとその家族のための施設)を古河市でスタートしたところ、少しずつ利用する子どもたちが増えてきたんです。ちょうど県境地域ということもあり、県外、とくに栃木県の利用者が増えてきました。

そんな中、茨城県と栃木県の行政の壁を感じることがありました。栃木県でも行政と連携して事業をはじめることによって、栃木県内の子どもたちを預かる場所をつくりながら、地域の理解を深めて壁を薄くすることができるのではないかと考えました。

地域とのつながりがつくりやすい場所を探した

プロジェクトのための土地選びにはこだわりました。最初は不動産屋さんに希望を伝えましたが、1か月ほど土地が見つからず。Buranoの構想に合いそうな土地選びの基準を設けて、都市計画マップを見ながら候補を出しました。実際に土地を見に行き、持ち主に売買の提案にも行きました。

地域選びの基準はさまざまありますが、既存の事業と同様に地域と連携しやすく開きやすい場所であることを重視しました。結果的に、農村部と住宅街の両方に隣接した土地を見つけることができたので、自然と地域につながっていくことができそうです。

設計は「一緒に歩いていける人」に依頼した

設計士の飯野さんとは、2019年に企画したイベントの実行委員会に関わっていただいたことで出会いました。一番重要だったのは、「一緒に歩いていける人」だったことです。とことん話し合い、こちらの情報を一つひとつ受け止めてアウトプットを出してくれる方だったのがポイントでした。

事業者と設計者では、どうしても見えているものや知識に違いがあります。僕自身も、プレゼンの準備をする中で建物への理解が深まり、そこではじめて飯野さんの設計の愛情深さを理解できた部分がありました。お互いの理解を積み上げていくプロセスは、すごく大切だったと感じています。

(事業者インタビュー:一般社団法人 Burano)


利用者の過ごし方を大切に、設計プランを練った

福祉施設の設計は今回がはじめてでした。普段は住宅や店舗を設計することが多いのですが、それらと同様に個別性がとても高く、一つひとつ丁寧に向き合うことで建築ができあがっていくこと。それから、福祉を考えることが地域や社会につながっていくという一連の過程が、すごく魅力的でした。打ち合わせが進むにつれてチームの一体感が高まったり、プランができていく過程を常に共有できたのは、新鮮な経験であり、素敵な時間でした。

今回は医療的ケアが必要な子どもたちのための建築です。子どもたちには(ケアのための)たくさんの機械が必要で、かつ寝たきりの状況で過ごすことが多いため、安心して過ごせる場所になるよう配慮しました。例えば、子どもたちは天井を見て過ごすことが多いので、天井に変化を持たせつつ、自分の居場所を感じられるようにするなど、普段とは違う視点で工夫をしました。

お互いの考えを理解するための一番の近道は「対話」

事業者と設計者は、とにかく対話することが大切だと思います。お互いの考えをより高い次元で共有できるように、とことん話し合う時間を何度も設けること。それが一番の近道になると思います。

よりよい理解のために行ってきたことは3つあります。まずは現場を知ること。すでにあるBuranoさんの施設で、子どもたちの過ごし方を1日の流れで見ていきました。2つ目は、スタッフさんや家族の方とのヒアリングの時間を設けること。zoomなどを活用しながら、対話を行いました。3つ目は、参考となる施設をチームで一緒に見学に行ったこと。オンラインでの見学にご協力いただいたりもしながら、施設運営の思いや使い方を伺いました。

見学の後はプロジェクトメンバーでフィードバックをし合い、理想的な施設の共通項を見つけていけたのが良かったと思います。

医療的ケアが必要な子どもたちとは、直接的なコミュニケーションをとるのが難しいこともあるので、Buranoでの日常をじっくり拝見しながら設計を進めていきました。医療器具の使い方やお薬の準備の仕方などは、専門性が高いものも多いです。それについてはスタッフのみなさんに、丁寧に使い方を教えていただきながら勉強することができたので、その知識もプランに反映できたのではないかと思います。

(設計者インタビュー:NIDO一級建築士事務所)

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