日本財団 みらいの福祉施設建築プロジェクト

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藤原徹平氏(第3回 審査委員)|「建築デザインの機能が拡張していくことを期待したい」

「第3回 日本財団 みらいの福祉施設建築プロジェクト」において審査委員を務めていただく藤原徹平さんから、公募にチャレンジされるみなさまに向けてコメントを寄せていただきました。

藤原徹平(Teppei Fujiwara)
建築家
横浜国立大学大学院Y-GSA 准教授
フジワラテッペイアーキテクツラボ 主宰

1975年 横浜生まれ
1998年 横浜国立大学 卒業
2001年 横浜国立大学大学院修士課程 修了
2001~2012年 隈研吾建築都市設計事務所 勤務
2010年~ 一般社団法人ドリフターズインターナショナル 理事
2012年~ 横浜国立大学大学院Y-GSA 准教授
2012年~ 株式会社フジワラテッペイアーキテクツラボ 主宰
2013年~ 宇部ビエンナーレ運営委員、展示委員

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未来志向の変化の中で、建築家もアップデートすべき

今、日本の福祉に関連する法律が大きく変わりつつあります。それぞれの領域において、日本の社会が抱えている課題を解消していくために法律がデザインされているということを、福祉業界のみなさんと議論をしていく中で実感しています。そうした未来志向の変化が起きている中で、建築家も旧態依然の施設設計を行っていてはダメだという課題感を抱くようになりました。

例えば障害者福祉のための施設であれば、単に利用者の人が作業する場所ではなく、一人ひとりが自立して社会の中で活躍していくためのあり方と、それを支えるプログラムや空間デザインまで考える必要があります。民間の事業者が自治体や行政などとの連携を強化し、取り組みを充実させていくことの重要性も強く感じています。

地域社会の課題に、建築デザインの観点から取り組む

また「地域に合う」福祉施設建築とは一体どのようなものなのか、これも難しい命題の一つだと思います。決して、現状の街並みや景観に合ってさえいればいい、というわけではないんですよね。
地域福祉を支えるコミュニティをどのように再生していくのか、自然環境の回復にどう取り組んでいくのか、そうしたさまざまな問題に対し、建築デザインが答えていくことにも期待したいと思います。

スケールよりも重要度。関係者の力量が問われる

福祉の重要な役割の一つは、前の時代でやむを得ず取りこぼしてきてしまったことを、より人間的な段階に引き上げ、社会をより良くしていくことだと考えます。ですから「みらいの福祉」について考える際、前の時代から残された宿題に取り組み、より良い未来を目指すリーダーシップが求められるでしょう。

今年の公募では、事業規模を問わず補助額を設定していないのが特徴です。ものすごく規模の大きいものでもいいですし、逆にごく小規模であっても重要なプロジェクトであれば助成ができるということです。スケールよりも重要度で判断することになるため、事業者・設計者のみなさんの力量がより試されるのではないでしょうか。

本プロジェクトを通して、地域の未来構想について福祉事業者と建築家が日常的に議論を重ね、その実現を請け負うようになっていく——そのように機能が拡大されていくことを期待しています。

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