第4回助成決定団体インタビュー 社会福祉法人中央福祉会/千葉学建築計画事務所
Text:遠藤ジョバンニ

「第4回 日本財団 みらいの福祉施設建築プロジェクト」において助成が決定した団体に対し、採択直後にインタビューを実施しました。
■作品名:届ける福祉「みらいの家」
■事業実施団体:社会福祉法人中央福祉会
■設計者:千葉学建築計画事務所
■キーワード:通所介護施設、訪問介護、地域包括支援センター、ボランティアセンターなど(申請時点)
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高齢者や介護施設のあり方を問うところから
社会福祉法人中央福祉会
理事長 北元喜洋 さん
本田宗大 さん
少子高齢化が進む社会において「高齢者」や「高齢者施設」を一括りに語ることはできない時代へとさしかかってきています。当法人では特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、病院や療養病棟など、高齢者が利用する医療福祉施設を、金沢市の4地区で約20年運営してきました。
介護・医療制度が大きな転換期を迎えているいま、保険制度の枠組みに留まらず、一人ひとりの要望に応え、地域で選ばれるサービスを提供する必要があります。そのためにも、未来を見据えて「これからの高齢者」へ、いかに役に立つことができるか。なのでまずは「高齢者」の定義や「高齢者施設」のあり方を問いながら、プロジェクトプランを練り始めました。従来の「来てもらう」から地域に暮らす高齢者のもとへ「出かけていく」形式にシフトした、ケアの拠点「みらいの家」の構想はそこから生まれています。
地域の声と福祉側の想いを言語化する難しさ
高齢者の福祉サービスにおいて重要なのは、年齢や性別、生活歴などを個別にくみ取ってケアサービスを提供することです。画一的な対応では、その人らしい生き方を、かえって我々が妨げてしまうことになりかねません。
「みらいの家」の申請では、地域の人々の声と私たち福祉事業者側の思いを言語化するのが大変でした。地域の課題、解消するためのサービスのあり方、地域にとってのメリットはなにか。地域の窓口である包括支援センター・介護サービス・経理・各担当者と議論を何回も重ね、約4ヶ月をかけて申請書を完成させました。
「いわゆる福祉施設」にとらわれない、人間が暮らすための場所
千葉学建築計画事務所
千葉学さん
中央福祉会さんのプロジェクト以前から、福祉施設の建築に携わってきました。「ゼロから議論して設計を進めること」の大切さを感じています。例えば目が見えない方が利用する施設の場合なら、制度に準拠して点字ブロックや手すりを設けますが、それだけでは利用する人々にとって快適な環境にはなりません。あくまで人間が暮らしていくための場であることを忘れず、「いわゆる福祉施設」というジャンルに回収されてしまわないようなあり方がこれからますます重要になると思います。そして今後は、高齢者が利用する福祉施設であっても、日常的に住む住宅との境目がない、ひらかれたものになる傾向が強くなっていくのではないかと思います。
地域や現場のことを実感をもって伝える、受け取る
今回で応募は3回目になりますが、この3年間で何度も中央福祉会さんの施設へ足を運び、職員の方々と議論してきました。介護の仕事の現場でどのようなことが起きているのか、利用者はどう過ごしていて、スタッフの方々はどのような想いで働いているのか。設計者がそれを知る機会はほとんどありません。現場での日々、その地域との関係性や実情、背景なども含めて、より実感を持って伝えていただくのがなにより重要だと思います。そして設計者も、それを当事者として受け止め、感じ取ることの重要性を再認識しました。
建築が果たす役割はとても大きくて、従来型の「施設」ではなく、街のごく当たり前の一つの場所として、生き生きとしたものになるよう設計者は目指していかなければいけないのではないかと感じています。
※他の採択事業者のインタビューはこちらからご覧いただけます(YouTube再生リスト)
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