
審査委員のインタビューや過去の助成決定団体のコメントなどさまざまな内容の動画や記事をアップしていきます。
第4回 日本財団
みらいの福祉施設建築プロジェクト
現在の日本では、少子高齢化が進み、家族や地域コミュニティのつながりが希薄になるなど、社会構造の変化が加速しています。それに加えて「個」の尊重、多様性の受容が求められるなど、人々の価値観や時代の空気感も変わりつつあり、社会における福祉のあり方が改めて問われています。
日本財団は60年以上にわたり、時代の変化をいち早く捉えて福祉分野におけるさまざまな支援に取り組んできました。だからこそ私たちは今、福祉のあり方を根本から見直し、みらいに向けてアップデートする必要性を感じています。
その実現を目指すためには、地域づくりの視点が不可欠です。これまで利用者と地域の人たちとの間に存在していた境界線を取り払い、福祉そのものが地域の日常的な風景の中に溶け込むような活動が求められています。すでに一部では、地域社会および利用者のニーズを叶える新しい取り組みがはじまっています。
本プロジェクトでは、みなさんと共に福祉と地域のみらいをつくっていくことを目指します。建築デザインを重要な要素として位置づけ、地域で暮らす人たちに愛され、多様な人の日常を支える福祉拠点のプランを募集します。
福祉事業者と建築家・設計者が協働し、あらゆるステークホルダーと丁寧に対話・議論を重ねることによって、「みらいの福祉」について真剣に考える場や機会が増え、その取り組みが全国へと広がっていくことを期待しています。
●上限金額
事業規模に見合う適正な金額を助成
●最大補助率
事業費総額の80%
●助成件数(目安)
10事業程度
●対象となる団体
日本国内にて次の法人格を取得している団体:一般財団法人、一般社団法人、公益財団法人、公益社団法人、社会福祉法人、NPO法人(特定非営利活動法人)
※一般財団法人および一般社団法人については非営利性が徹底された法人のみ対象とします。
※設計者参加資格は「第4回 日本財団みらいの福祉施設建築プロジェクト募集要項 <設計者向け>」「設計者参加資格」に記載のとおりです。
※医療法人等その他の法人は対象外です。
●対象となる事業
福祉事業(※)を行う施設や事業所の建築関連事業(新築/改修・増築等/外構工事)
※福祉事業とは、社会福祉法に定める第一種社会福祉事業および第二種社会福祉事業を指します。
※就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型については対象外です。
●申請締切
2024年9月4日(水)17:00
●1次~2次審査
日本財団および審査委員による書類審査(募集締切後~2024年11月頃)
●最終審査
事業実施団体と設計者によるプレゼンテーション(2024年12月15日)
●事業実施団体と設計者が協働すること
●本プロジェクトの趣旨に沿ったものであること
●募集要項の記載内容を遵守すること
●本サイトで募集要項をダウンロードし、詳細を確認のうえ、申請してください
●事業実施団体による各種書類の提出と、設計者による設計デザイン案の提出が必要です
下記ボタンから2種類の募集要項(PDFファイル)をダウンロードしてください。事業実施団体と設計者それぞれが、両方の募集要項を必ずご確認ください。また、申請に必要な日本財団指定の様式はこちら(Zipファイル)からダウンロードしてください。
※ダウンロード時に警告が表示される場合がありますが、一部ブラウザ(Google ChromeやFirefox)の仕様によるもので、ファイルの安全性に問題はありませんので、そのままダウンロードしてください。
本プロジェクトの最新情報をメールでご案内しています。ご希望の方はこちらでご登録ください。
建築家
空間研究所
日本女子大学 学長
建築家
空間研究所
日本女子大学 学長
1958年千葉県生まれ。1981年日本女子大学家政学部住居学科卒業。日本女子大学大学院修了後、香山アトリエを経て、空間研究所主宰。
1997年から日本女子大学で教鞭を執り、現在、日本女子大学建築デザイン学部建築デザイン学科教授。2020年5月より同大学学長。研究分野は、建築設計・住居計画。
主な作品は、RIGATO F(1998、東京建築士会住宅建築賞2000)、大阪府営泉大津なぎさ住宅(1999)、ヌーヴェル赤羽台3,4号棟(B1街区)(2010、グッドデザイン賞2012)、竹内医院(2010、千葉県建築文化賞2011)、日本女子大学附属豊明幼稚園(2011)、SHARE yaraicho(2012、住まいの環境デザイン・アワード環境デザイン最優秀賞2013、日本建築学会賞[作品]2014)、SHAREtenjincho(2021)など。
著書に、『変わる家族と変わる住まい』(共編著、彰国社、2002年)『住まいの境界を読む 新版』(彰国社、2008)、『おひとりハウス』(家を伝える本シリーズ、平凡社、2011)『アジアン・コモンズ』(平凡社、2021)などがある。
建築家
有限会社駒田建築設計事務所
建築家
有限会社駒田建築設計事務所
1966年 福岡県生まれ
1989年 九州大学工学部建築学科卒業
1989年〜1993年 東陶機器株式会社システムキッチン開発課
1996年 駒田建築設計事務所 共同設立
現在 有限会社駒田建築設計事務所 取締役
東京藝術大学 非常勤講師
明治大学 兼任講師
建築家
仲建築設計スタジオ 共同代表
建築家
仲建築設計スタジオ 共同代表
1976年 京都府生まれ
1999年 東京大学工学部建築学科卒業
2001年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了
2001-08年 山本理顕設計工場 勤務
2009~11年 横浜国立大学大学院Y-GSA設計助手
2012年〜 仲建築設計スタジオ設立、共同代表
現在、法政大学、東京電機大学、日本大学、芝浦工業大学非常勤講師。グッドデザイン賞審査委員
認定NPO法人マギーズ東京 センター長
ケアーズ白十字訪問看護ステーション 統括所長
認定NPO法人マギーズ東京 センター長
ケアーズ白十字訪問看護ステーション 統括所長
1950年 秋田県生まれ
1973年 聖路加看護大学(聖路加国際大学)卒業 看護師・保健師・助産師
1992年 東京都新宿区で訪問看護を開始し、主に在宅ホスピス活動に専念
2001年 母体法人解散に伴い起業し、同一地区で訪問看護を継続
2010年 NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」に訪問看護師として取り上げられる
2011年 学校に保健室があるように街の中にも保健室をと「暮らしの保健室」を開設
2015年 看護小規模多機能型居宅介護「坂町ミモザの家」開設
2016年 江東区豊洲に英国発祥のマギーズセンターを日本の最初の施設としてオープン
2019年 第47回フローレンスナイチンゲール記章受章
2022年~2023年 日本医療福祉建築協会(JIHa)建築賞選考委員
北海道済生会 常務理事
建築家
北海道済生会 常務理事
1987年、社会福祉法人恩賜財団済生会支部北海道済生会小樽病院のリハビリテーション技師として地域医療や福祉に従事。
2007年、事務部長となり、病院と重症心身障害児(者)施設の建築及びこれらを核とした周辺地域の開発計画を策定。
2012年 院長補佐となり、小樽築港地区に施設整備を実施、福祉型商業施設の誘致や公共バスの路線変更などを行い、2017年に開発計画を完了させた。
2018年から現職。2021年には、大型商業施設と連携し民間主導型のソーシャルインクルージョンのまちづくり「小樽ウエルネスタウン構想」を策定。
現在、行政や企業等と連携し地域課題解決のための様々な福祉事業や社会的処方事業を展開中。
全国自立援助ホーム協議会 事務局長
自立援助ホームあすなろ荘 ホーム長
全国自立援助ホーム協議会 事務局長
自立援助ホームあすなろ荘 ホーム長
1996年日本社会事業大学卒業後、児童養護施設、知的障害児入所施設、認証保育所等で児童の支援に従事し、2004年より社会福祉法人子供の家自立援助ホームあすなろ荘に入職。2006年よりホーム長に就任し、青年期の自立支援を行っている。あすなろ荘での支援を行いながら、東京都社会福祉協議会児童部会や全国自立援助ホーム協議会で役員として、自立援助ホームの制度などの整備を行っている。
現在児童部会副部会長並びに全国自立援助ホーム協議会事務局長に就任。
日本財団 常務理事
日本財団 常務理事
1991年、日本財団に採用。競艇学校での研修、旧運輸省への出向を経て、阪神淡路大震災復興支援の団体設立、公益事業の成果物を電子化し公開する情報公開サイトの構築、事業及び管理系業務の改革とIT化、財団のブランディング構築などを担当した。
事業面では、犯罪被害者支援制度の定着と促進、高齢者の転倒予防に関する事業の開発、船舶の技術開発や造船事業者の安全対策推進、企業との連携プロジェクトなどを担当し、経営支援グループ長、総務部長を経て2017年に常務理事に就任。現職。
組織や活動についての情報公開を適切に行っているか、または外部機関による組織評価を受けているか。
地域の特性やニーズに沿った“みらいの福祉”を目指しているか。
事業の目標が目的に沿って明確に設定されているか。
目標を実現するための事業計画・資金計画が適正かつ合理的であるか。
多様な関係者を巻き込み、事業の社会的意義を高めるとともに効果的に実施する工夫があるか。
助成終了後においても活動を継続、発展させていくための十分な自己財源や資金調達の計画があるか。
施設を利用する人や地域住民が心地よく過ごせ、誇りを持てるような空間であるか。
地域にひらかれた、“みらいの福祉”を実現するための建築であるか。
助成終了後においても活動を継続、発展させていくための建築になっているか。
1次審査通過事業(11事業)を決定いたしましたので、一覧表の通りご報告します。
※申請数:43事業(重複申請を除く)
※記載事項:設計デザイン案登録番号、事業ID
1次審査通過事業(PDF)
2次審査結果について、下記の通り報告します。
なお、2次審査不採択事業については、以下PDFをご覧ください。
2次審査不採択事業(PDF)
【2次審査通過事業(5事業)】
※記載事項
設計デザイン案登録番号
設計デザイン案タイトル
事業実施団体/設計者
NFP0006
スキップフロアによる障害者グループホームの地域拠点化 たけし文化センター田町
(特)クリエイティブサポートレッツ/株式会社坂茂建築設計
NFP0007
安心と遊び、生きる喜びが発酵するこどもまんなかユートピア
(福)宇治福祉園/株式会社地域計画建築研究所大阪事務所
NFP0008
きどのイドバタ -風景と人の交わる”きどのミチ”-
(福)薫英会/teco株式会社
NFP0040
地域とともに住み続けるための拠りどころ 多世代福祉交流施設「大分わさだ 安心の丘」
(福)大翔会/有限会社ビルディングランドスケープ一級建築士事務所
NFP0045
届ける福祉「みらいの家」
(福)中央福祉会/千葉学建築計画事務所
(以上、設計デザイン案登録番号順)
NFP0006
スキップフロアによる障害者グループホームの地域拠点化 たけし文化センター田町
特定非営利活動法人クリエイティブサポートレッツ
障がい者のグループホームと一般のシェアハウスを合築するという難しいプログラムに果敢に挑戦しており、建築的にも異なるプログラムの融合に工夫がみられる。シェアハウス側のシェアリビングとグループホーム側の居間・食堂などのコモン空間でどのように居住者たちが繋がることができるかなど懸念は残るが、すでに実績のある運営者の手腕のみせどころでもあろう。外観も接地階のオープンな構成に加えて、斜線のセットバックを上手く利用して、階段状のテラスとしているところも、楽し気な建物の表情をつくることに成功している。
街のランドマークとなるようなカラフルな色の外壁が人目を引き、楽しげです。知的障害者グループホームと一般の方が利用するシェアハウスが内部で混じり合い、セットバックするテラスから日常のアクティビティが溢れ出て、都市の中で開かれた福祉施設となっています。都市にこそ、このような福祉施設が必要だと強く感じました。今後を期待しています。
中心市街地に計画された7階建の建築である。知的障がい者のグループホームに障害の有無に関わらず利用できるシェアハウスが複合するという新しい試みである。随所に用意される居場所がスキップフロアなどによって繋がるという計画であるが、さまざまな制約を乗り越えて、このつながる状況を実現してほしい。
これまで障碍者のグループホームを運営してきた経験を活かしながら、shareハウスとの併設で新たな展開が期待される。地域に開かれたシェアリビングを試みる企画は、他の地域でのモデルとしても期待できる。グループホーム部分の避難路が気がかりが残る。日頃からの避難訓練や役割分担も視野に入れて欲しい。
本事業は、中心市街地にあり制限の多い高層型施設でありながら、高度行動障害者の多様なニーズに応えるために、可変性のある個室を設けるなど様々な工夫が織り込まれています。虐待防止につなげる交流も創出する計画で、都市型の施設や難易度の高い障害者支援の新しい形を切り拓く事業と言えます。
この建物を見たときに、地域と施設の交流というよりも、施設を利用している方々が自然な形で社会参加ができるような、そんな建物のような感じがしました。すでに実践されているからこその建物なのではないでしょうか。町の中にあることでどうしても縦に延びる建物となりますが、地域の人たちが上層階に上がっていける仕組みづくりが大事だと思います。
今回のご申請は、従来の枠にとらわれない非常にチャレンジングな計画であり、大変興味深く拝見いたしました。これまでの団体の実績と深い知見が、この施設の設計に集約されていることがよくわかります。地域への定着はもちろんのこと、この事業が福祉分野に新たな視点を提示していくことになると考えます。
NFP0008
きどのイドバタ -風景と人の交わる”きどのミチ”-
社会福祉法人薫英会
子供と高齢者の施設という組み合わせはすでに様々なプロジェクトで試みられているが、通りに沿った長い敷地にリニアに連続し、かつ、相互に内外に開かれた計画となっている点はユニークである。計画者は、このプロジェクトの実施にあたって、長年の法人の経験を踏まえて、敷地の選定にも腐心し、この通りに沿った敷地を選定したとのことで、この建築の地域との連携の在り方への強いこだわりを感じさせる。福祉施設が地域に対してどのように開きうるかの、新たな可能性を示す計画となっている。まさに、縦割りの制度を横断した「制度の枠にとらわれない福祉」を体現する建築計画と言えよう。
地域の方が気軽に立ち寄りたくなるような、親しみのある開かれた木造平家の提案ですが、内部は敷地形状にあわせてつけられた緩やかなレベル差や平面のずれが巧みに操作され、豊かな空間体験につながっています。またステージ客席となるような屋外階段は、子供から大人まで集まれる場所が創られていて、地域に愛される施設になることを願っています。
地域住民がつくった大切な公園のそばに計画された平屋の木造建築である。土地の起伏をトレースするような「きどのミチ」が建物を貫通し、3つの機能を結びつける試みである。ミチの効果についてより一層の精緻化を図り、3つでひとつ、といった景観を実現してほしい。あらゆる人に開かれた地域社会の拠点となることを期待している。
斜面を活かした縦長の土地を地域との交流を意識しての計画は斬新で評価できる。看多機を真ん中に持ってきているが、ここが廊下のような位置づけともみえ、双方向からの出入りがあり気がかり。看多機利用者の特性も考えたうえで、通所部分と泊部分との配置や夜勤者の居場所など既存の看多機を実地見学などして改善してもらいたい。
かつての「井戸端」を彷彿させる川沿いにある長屋のような細長い施設で、保育や発達支援、看護多機能型支援事業所を中心とした共生型施設を目指した計画です。住民誰もが気軽に立ち寄りマルシェ等を運営、交流することもできます。不易と流行を感じる新時代の井戸端づくり、地域づくりに期待します。
この建物の図面を見たときにこの建物を利用する方たちだけではない、子どもたちが建物の周りで遊んでいたりする姿を想像しました。子どもたちが放課後や休日に家でも学校でもない場所に集まり交流を深め、そこに高齢者の見守りや交流が生まれることで、地域全体で子どもを育てていけるようなそんな建物になるのではないかと感じました。
今回のご提案は、穏やかな丘陵地に様々な福祉機能を一体化させた、特徴的な計画だと感じました。多様な利用者が訪れることで、地域のニーズに幅広く対応できる点が評価できます。団体のこれまでの取り組みを一段階引き上げる計画だと考えられます。今回の事業が、これからの福祉のあり方の目印となるよう期待しています。
NFP0045
届ける福祉「みらいの家」
社会福祉法人中央福祉会
「家」と「施設」の基本的な違いは、その機能の包摂性にある。「施設」の合理的な機能の単一性に比べて、「家」には小さくとも多世代の人々による様々な営みを包摂している。この計画が「みらいの家」というタイトルである所以もそのようなことであろう。複合的な機能を少し大きめの住宅スケールに共存させ、サテライトとして、近隣スケールに配置するこの試みは、福祉の「みらい」の在り方を確かに示している。住宅地の街並みに埋め込まれたその建築の佇まいもよいし、様々な福祉施設を運営する団体ならではのプロジェクトと言えるだろう。
サテライト型の福祉施設という古くて新しい発想は、これからの福祉に必要とされる考え方だと思います。大きな家のような外観は街に溶け込んでおり、開口部や屋根の重なりなど調和のとれた端正な美しさがあります。大屋根の下の通り土間はスケール感がよく、この場所を地域に開いた生き生きとした場にどこまでできるのか期待しています。
住宅地に計画された2層の木造建築である。ケアを届ける拠点という新しい試みに対して、街並みに溶け込む形態と、親しみやすい建築空間を提示している。これらの実現のための架構は非常にシンプルなものである。透明感のある建築を期待している。
金沢という元城下町の町家のたたずまいに溶けこむ外観は、地域の人々にとっても馴染みやすい場所となることだろう。高齢化が進む地域の買い物ニーズに、地産品販売の工夫は、地方都市の他の地域のモデルとなる。「集める」のではなく「届ける」福祉という理念も共感できるが通っても良し、わが家でも良しの双方向の繋がりを期待する。
地方の高齢化や過疎化が進む中、従来型の支援が届きづらい地域へのきめ細かな支援策が急務となっています。本事業は地域に出向き、地域包括支援センターやニーズに応える機能を備えたコンパクトなサテライト施設を展開するもので、高齢化し移動弱者の多い地方の新たな社会資源モデルになり得る意欲的な取り組みです。
元来の集合型の施設の形態が多い高齢者福祉の中で、地域の中にサテライト的に家を作ることで、高齢者の方々も「決められた日に通う」から「今日は行こうかな」と、より主体的に生活することが可能になっていく、そんな思いを感じました。他の地区でも計画があるようですので、ぜひ多くの地区にこのような建物を建ててほしい、その一歩として楽しみにしております。
今回のご提案は、地域に分散する施設の拠点となるという点で、非常に興味深い試みです。福祉施設を地域に開くというより、地域の中に自然と溶け込むような、生活感のある拠点づくりを目指している点が印象的です。企画の中には、今後さらに検討が必要な部分も見受けられますが、地域のニーズや職員の皆様と一緒になって施設を育てていくことを願っています。
人生100年と言われる時代にあっては、多くの人々が一生の内に、自立して生きられない時間をもち、多くの時間を人の助けを借りて生きなくてはならない。だから、福祉施設は、限られた人の特別な場所でなく、その空間も時間もシームレスに日常に繋がるべきものなのである。社会、地域に開かれた、街の一部となるようあり方を模索する、この日本財団による「みらいの福祉施設建築プロジェクト」の意味は、長寿社会日本において、多くの人々の様々な状況を如何にシームレスにつなげ、人生の豊かさにつなげられるかという問いかけなのだと思う。
そして、この審査を通して、知ることができたこの困難な問いに特段の熱意をもって取り組んでいる多くの団体の人々やデザイナーに心からの敬意を表したい。
応募されたどの作品にも情熱と創意があふれていて、みなさまのチャレンジが新しい福祉施設を創っていくのだと胸が熱くなりました。今回、最終審査を通過された5事業はいずれも、地域に開き、新しい福祉のあり方を模索する姿勢が強く打ち出されていました。地域にインパクトを与え、だれもが訪れたくなるような福祉施設となれば、社会にも大きな影響を与えるものと思います。今後は事業実施団体と設計者の協働がさらに良い形で実現し、提案が具体化することを心より願っています。
最終プレゼンテーションに進んだ事業はどれも、新しいケアを地域社会の中に位置付けて、一つの施設建設にとどまらないスケールを持ったものであったと思う。これらの提案に共通していることがあって、それは、建築空間の魅力と景観的な配慮である。どのような空間で人々が暮らすのか。そしてそれはどのように地域から見えるのか。この二つの視点から計画が組み立てられ、建築デザインへの篤い期待を感じた。残念ながら最終プレゼンテーションに進めなかった事業は参考にしていただけたらと思う。
「みらいの福祉施設」といった時に、この地域にこの建築が建って時間が経過してどのような街になっているのか、そこに住まう人々の暮らしはどうなっているのか、働く人はどうなのかと想像の翼を拡げて思い描く必要を感じながら審査に当った。どんなに頑張っても過疎が進む地域に、大型の施設を計画しても、その機能面では有用なのかもしれないけれども、地域から見える景色は今後どうなのか疑問が残るものも見受けられた。福祉施設が当事者のニーズに沿ったものであり、そこに多様性を包摂した地域そのものの動きを育てる未来が見えるのか、育てるエネルギーを持続していけるのか、沢山の人との対話を大事に計画が練られていることを期待する。
施設の立地環境や地形を工夫・克服する建築デザインなど、多彩な未来型福祉施設の提案が寄せられていました。私は、その実現のための戦略に着目し、ビジョン、サービスと建築デザインの共創度合い、効果発現の速さ、持続性を評価させて頂きました。最終審査に残った5事業は、いずれも事業実現への熱意が感じられ、地域内外の住民や施設利用者、スタッフによる協働の施設運営を目指した優れたものでありました。その中でも助成が決定した3事業は、審査員全員の評価が高く、建築デザインと福祉サービスの新たな可能性を感じる内容でした。これら事業が、日本の先進的施設として社会課題解決に成果を上げ、発展していくことを強く期待しています。
今回初めて審査に参加させていただきました。全体の印象として、どれも施設を利用する方々と地域の方々が自然な形で交わっていく建物をどのように作っていくのかということに、かなりのアイデアが詰まっているものばかりだったという印象でした。そういった点では児童分野、とりわけ社会的養護関係の施設については、その性質上なかなかこのプロジェクトにかなう建物を作ることは難しいだろうという思いがありました。しかし他の業種でも様々な工夫でその壁を打破しようとしているものはありましたので、児童分野での地域との融合ができることを願います。
皆様の熱意あるご応募に心から感謝申し上げます。回を重ねるごとに、各団体の企画は洗練され、これまで決定された事業の研究に基づいた内容が増えてきました。皆様のご努力に敬意を表します。
一方で、各団体の独自性や地域への深い理解に基づいた、より個性的な企画も期待しています。例えば、各団体の福祉事業の哲学を未来の地域設計にどう活かすのか、といった視点を業務設計や建築設計に反映した、団体の強みや地域特性を最大限に活かした、独創的な企画のご応募を期待しています。
本公募が申請事業に求めたい“みらいの福祉”の例を記載します。これらすべて当てはまっている必要があるというものではありません。支援対象とする人や地域により、必要とされるニーズや目指す姿はそれぞれです。どのような姿を目指していくのか、事業実施団体と建築設計者、その他関係者が一体となって議論を深め、計画をするための参考としてください。
●<全体>時代と共に変化するケアのニーズやあり方に応えるため、制度に関わらず、地域や利用者のために大切にしているケアの理念や計画がある。
●<利用者(高齢・障害等)>支援する側・される側ではなく、人と人との関係であるという考えのもと、各スタッフが、利用者のその日の状態を見て個別に必要なケアを判断し行う。
●<利用者(高齢・障害等)>利用者の意思を尊重し、毎日いきがいをもって過ごしてもらうために、本人の身体能力や認知能力にかかわらず利用者の希望を叶えるためケアの方法を工夫する。
●<利用者(障害(就労)等)>利用者の能力を決めつけることなく、施設内で支援される側から、地域社会の一員として活躍できるように、本人のステップアップを可能にする仕組みがある。
●<利用者(児童)>子ども期はその後の人生の土台となる重要な時間であるという認識のもと、本人の成長段階に併せた適切なケアを行いながら自身の成長を促す環境を整える。
●<利用者(児童)>どのような環境にある子どもも将来に多くの選択肢を持てるという考えのもと、子どもと養育者が孤立したり不安を抱えたりすることなく安心できる居場所になる。
●<スタッフ>施設で働くスタッフが誇りやいきがいをもって働くため、時代にあわせた組織運営(研修や情報共有、権限の移譲等)の仕組みを構築する。
●<全体(地域)>施設は地域を構成する一員であるという考えのもと、施設が地域ケアや地域の課題解決の機能を有する。
●<全体(地域)>利用者だけでなく、地域のために施設があるという認識のもと、施設に集う住民と利用者のつながりを生む仕掛けをつくる。
●<全体(地域)>地域住民が自然と施設に集まる仕掛けがあり、地域住民が施設を身近に感じたり、誇りに思うことができる。
本プロジェクトに関する「よくある質問」とその回答をこちらのページでまとめて掲載しています。お早めにご確認ください。