日本財団 みらいの福祉施設建築プロジェクト

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第4回助成決定団体インタビュー 社会福祉法人薫英会/teco株式会社

Text:遠藤ジョバンニ

「第4回 日本財団 みらいの福祉施設建築プロジェクト」において助成が決定した団体に対し、採択直後にインタビューを実施しました。

■作品名:きどのイドバタ -風景と人の交わる“きどのミチ”-
■事業実施団体:社会福祉法人薫英会
■設計者:teco株式会社
■キーワード:看護小規模多機能型居宅介護、放課後等デイサービス、認可型小規模保育事業など(申請時点)

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はじまりは「地域にひらくこと」と切実な地域の声から

社会福祉法人薫英会
常務理事 大林 喬充さん

私たちのプロジェクトは、みらいの福祉施設建築プロジェクトへ応募を検討する2年前からすでに始まっており、構想は2020年からスタートしていました。プロジェクトチームですでにプロセスに時間をかけていたので、申請時にはその部分をどう簡潔に言語化して、プロジェクトを知らない人々にも訴求できるのか意識しました。

このプロジェクトは、他の申請と比べて強いバックボーンや、大きな社会課題を解決する、といったものではなく、私たちが普段から感じていた「地域にひらくこと」や、地域のとあるご夫婦から受けた「コミュニティの希薄化」についての相談が出発点になっています。

地域の状況と、そこに暮らす人々の大小さまざまな困りごと。これが、建築が建って実践に結びつくことで、未来の地域の風景がどう変わるのか。「民と官の中間領域」である社会福祉法人の立場から、ある種普遍的なことに地域の皆さんと挑戦し、育てていくプロジェクトなので、その部分を伝えられるよう工夫しました。

ケアする・されるを超えた相互作用がはたらく場を、建築の力で

地域との関わりのなかで、私たちの営みの中心に「ケア」というものがあります。プロジェクトでは「ケアする/される」という画一的な関係性でなく「ケアの相互作用」が自然に生まれるような場をつくることにこだわりました。これを実現するためには、やはり建築デザインなどのハード面が非常に重要になっていくと思います。プロジェクトの目的や想い、抽象的なイメージを伝えて、対話を重ねながら具現化してきたtecoさんとのプロセスは、このプロジェクトにとって非常に重要な部分だったと考えています。

基本設計から長期的に携わり、ビジョンを一緒に考えた

teco株式会社
主宰 金野千恵さん

薫英会さんは最初から「街の中心から離れたところに施設があるが、もっと中心に近い場所で、街と繋がって福祉サービスを提供したい」という意図がはっきりとありました。

私たち自身は申請書を提出する約1年半前、基本設計・基本計画という、土地の調達や実施サービスが固まる前段階から携わっていました。なので、この地域のことや、伝えるべきことの優先順位まで深く理解することができました。

時間をかけて「きどのイドバタ」のビジョンを一緒に考えるところから、そしてそれを達成するための建築のあり方について議論を重ねました。みらいの福祉施設建築プロジェクトへの応募を決めたのは申請締め切りの2ヶ月前で、建築案もほぼ固まった状況でしたので、その期間中に見せ方に関する調整を行いました。

地域を福祉のまなざしで見ている人々の力

プロジェクトチームの皆さんは、一歩一歩確かめながら手戻りも少なく、しっかり積み重ねてくださる方々です。その部分で非常に私たちもビルドアップできたという実感が続いた約2年でした。

地域を福祉のまなざしで見ている方々は、福祉サービスの利用者に留まらず、困った人がいれば「じゃあ、あの人とあの人を繋ごう」と、ネットワークが非常に豊かです。私たち建築側が想像する以上に場を使いこなしたり、そこを起点にさまざまな人を呼び寄せていったり、そうした力があることを知りました。

 


 

※他の採択事業者のインタビューはこちらからご覧いただけます(YouTube再生リスト)

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