日本財団 みらいの福祉施設建築プロジェクト

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医療法人医王寺会/株式会社パトラック|第3回 日本財団 みらいの福祉施設建築プロジェクト

「第3回 日本財団 みらいの福祉施設建築プロジェクト」において助成が決定した団体に対し、採択直後にインタビューを実施しました。

■作品名:「にちこれ」
■実施事業団体:医療法人医王寺会
■設計事務所:株式会社パトラック


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「自宅に帰るための施設」で、納得できる選択を

介護施設に入所されている方7-8割の方が、ご本人が望まない場所で過ごしている現状があり、それがなぜ起きているのかを考えました。多くの方は何かしらの理由で入院したとき、退院の許可が出てから2-3日の間に、介護施設に入るのか、自宅に帰るのかの意思決定をしなければなりません。

そこでとりあえずの選択をするのではなく、ご本人もご家族も納得できる場所で過ごせるようにすることが、人が最後までその人らしく生きられる最初のポイントになるのではないかと考え、「自宅に帰るための施設」を構想しはじめました。

活動を地域にひらくため、住民主体の会議に積極的に参加

家に帰るための施設をつくるにあたり、ショートステイと看護小規模多機能型居宅介護、有料老人ホームを組み合わせることにしました。それを実現するにあたり、自分たちの法人だけで検討を重ねるのではなく、早い段階から地域にひらいていくことを意識しました。

この地域には住民が主体となって運営している自治協議会があるので、その会議に顔を出し、福祉に対して抱いていることを話してもらったり、施設や事業の構想を伝えて意見を聞いたりしながら、一つひとつ対話を重ねていくプロセスを通して、事業の魅力を伝えることができたと思います。

情報共有を重ね、設計者との共通言語を増やした

安宅さんをはじめとする設計チームとは、なるべく週1回オンラインミーティングを実施して議論を重ねてきました。設計をお願いするにあたり、私たちの事業に伴走してくれるかどうかを重視しました。

安宅さんはお話したときの受け答え含め、お互いの熱量とタイミングがとてもマッチしたんです。できるだけ細かいところまで情報共有をしたり、他の事業者の施設へ一緒に視察に行ったりすることで、共通言語をつくっていけたのが大きかったです。

(事業者インタビュー:医療法人医王寺会)

 


 

特別な空間ではなく、誰もが快適に過ごせる場所をつくる

2015年〜2020年頃、診療所と高齢者のショートステイなど、複数の制度を組み合わせた施設建築の設計に連続して取り組んだ時期がありました。どの事業者さんも、医療と福祉のあるべき姿を追求するエネルギーやチャレンジ精神を持っており、いつも刺激を受けています。

自分自身も人の暮らしや地域社会のあり方を考え、そこに参加できることにやりがいや面白さを感じます。私は特別にその人たちのための空間をつくるよりも、みんなが快適だと感じるものを、誰もが同じように享受できるような場所をつくりたいと考えて取り組んでいます。

設計だけでなく、事業運営にも踏み込んで意見を出した

大谷さん(医王寺会)が「福祉と建築」というイベントを運営されており、そこに登壇したのが大谷さんとの出会いでした。そこから私の手がける建築を知っていただき、今回の医王寺会さんのプロジェクトにつながりました。

苦労した点はそこまでなかったです。医療や福祉に関する制度のことや、施設運営に関することをどんどん質問し、けっこう事業に踏み込んで口を出しましたが、意見やダメ出しも志賀さん(医王寺会)が懐深く、柔軟に受け止めてくれたのですごくやりやすかったです。

事業者と設計者が対話を重ねることで、建築は進化する

設計者として、(建築以外の部分も)事業者任せにせず、事業についての希望や構想をまとめる会議に一緒に参加するなどして、なるべく自分でも説明ができるようにしておくことが重要だと思います。

事業の計画は建築が形になっていく中でも変化していくものですし、その影響を受けてさらに建築が変わったりすることもあります。かっちり最初から決めて進めるよりも、対話する時間を取り、話し合いを重ねながら少しずつ進化させていくものだと思います。

(設計者インタビュー:株式会社パトラック)

 


 

※他の採択事業者のインタビューはこちらからご覧いただけます(YouTube再生リスト)

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